東京 — 不凍液に含まれていた化学物質で家族3人を殺害した疑いで逮捕された東京在住の夫婦に対し、11月22日、夫の母親を殺害した疑いで新たな逮捕状が出されたと警視庁が発表した。
警視庁が細谷健一容疑者（43）と妻の志保容疑者（38）に逮捕状を請求するのは、末娘、健一容疑者の妹、そして父親の殺害をめぐる過去の事件に続き4度目。警視庁は、家族のホテル経営と相続をめぐってトラブルが起こり、夫婦が不凍液に含まれていた化学物質を飲ませて親族を殺害したとみている。
今回の事件では、夫婦は2017年8月から2018年1月にかけて、自宅アパートで健一容疑者の母八重子さんに化学物質のエチレングリコールを飲ませ、死亡させた疑いがある。八重子さんは2018年1月に68歳で亡くなった。
八重子さんは夫婦と同じアパートに住み、腎臓疾患のため透析治療を受けていたが、体調が悪化し、2017年9月に病院に転院。亡くなる直前には再生不良性貧血という珍しい血液疾患を発症し、嘔吐や血痰がみられた。死因は気道閉塞だった。
警視庁が保存されていた血液やカルテ、検査データを調べたところ、八重子さんの腎臓疾患は入院後も悪化し続けていたことが判明した。エチレングリコールは不凍液などに使われる化学物質で、摂取すると腎臓障害を引き起こす可能性がある。警視庁が医師に事情聴取したところ、エチレングリコールを繰り返し摂取させられたことで腎臓疾患が悪化し、再生不良性貧血を発症したという説明と症状は一致していると判断した。
さらに、警察が両容疑者のスマートフォンを解析したところ、八重子さんの体調が悪化し始めた2017年以降、2人はインターネットのショッピングサイトでエチレングリコールを複数回購入していたことが判明。入院前に八重子さんにエチレングリコールを飲ませたことを示唆するメッセージをアプリ上でやり取りしていたことも確認された。
細谷家系図（毎日新聞）
登記簿などによると、八重子さんの死後、健一さんの妹・美奈子さんは2018年4月に41歳で他界。その後、健一さんは父・勇さんの後を継いで、実家のホテル経営の代表取締役に就任。その直後の2018年6月、健一さんの父が73歳で他界し、健一さんはそのマンションを相続した。
こうした事実の積み重ねから、警視庁は夫婦が経営と遺産相続をめぐって両親と妹を殺害したと結論付けた。
2023年3月には、4歳の長女ヨシキさんも死亡。東京地検はヨシキさんの殺人容疑について不起訴とし、捜査を続けている。夫妻は、すでに美奈子さんと勇さんの殺人容疑で起訴されている。